親の家を売るか残すか迷ったときの考え方
まず確認したいこと
売るか残すかは、いま決めなくて大丈夫です。
親の家を売るか残すか決められないのは、二択という問いの立て方に原因があります。売る・貸す・管理・保留の四択への開き方、気持ちとお金の論点の分け方、知っておきたい制度の期限まで、公的情報に基づいて整理しました。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年6月15日
読了目安
約13分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
スマホの検索履歴に、「実家 売却 相場」と「実家 残す リフォーム」が交互に並んでいる。
査定サイトを開いては、入力の途中で手が止まって閉じる。
そんな夜を何度か繰り返して、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
親の家を売るか、残すか。
どちらかに決めようとするたびに、「売ったら後悔しそう」
「残したら負担になりそう」と振り子のように揺れて、結局どちらも選べない。
先にお伝えしたいことがあります。
売るか残すかは、いま決めなくて大丈夫です。
そして、決められないのはあなたが優柔不断だからではありません。
多くの場合、「売るか残すか」という二択の問いの立て方そのものに原因があります。
この記事では、売るか残すかの“正解”を示すのではなく、迷いを「比較できる形」に変える方法を整理します。
読み終わる頃には、次に何を確認すればいいかが見えてくるはずです。
結論:二択をやめて、四つの選択肢で考える
結論から書きます。
親の家の今後は、「売る・貸す・管理する・保留する」の四つの選択肢を同じテーブルに並べて比較すると、格段に考えやすくなります。
「売るか残すか」の二択で迷い続けている人の多くは、実は選択肢が足りていません。
「残す」という言葉の中には、「貸して活かす」
「自分たちで管理し続ける」
「決めずに様子を見る」という性質の違う道が混ざっています。
これを分けずに「売るか、それ以外か」で考えると、比較のしようがなくなるのです。
また、迷いが深くなるもう一つの原因は、気持ちの論点とお金の論点が頭の中で混ざっていることです。
これも後ほど、分けて整理する方法を紹介します。
なぜ「売るか残すか」の二択は決められないのか
二択で考えると、問いは自然と「手放すか、守るか」という感情の対立になります。
手放す側に立てば思い出に申し訳なく、守る側に立てば負担が怖い。
どちらに立っても心が痛むので、考えること自体を先送りしたくなります。
実際、こうして判断が先送りされた家は全国的に増えています。
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月時点)によると、全国の空き家は900万2千戸と過去最多、空き家率は13.8%と過去最高になりました。
このうち賃貸・売却用や別荘などを除いた、いわゆる行き先が決まっていない空き家は385万6千戸にのぼります(参照元:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、確認日2026年6月8日)。
この数字は「だから早く売りましょう」という話ではありません。
多くの家が「決断」を待ったまま止まっているという事実です。
決断という重い言葉を、いったん「比較」と「確認」に置き換える。
それがこの記事の提案です。
まず確認したい3つのこと
四つの選択肢を比べる前に、次の3点を確認しておくと、その後の整理が一気に楽になります。
- 1. 引っかかりの正体はどれか。売れない理由が「気持ち」なのか「お金」なのか「家族」なのか、一言で書き出してみる。「親がまだ元気なのに売る話をするのが申し訳ない」なら気持ち、「いくらかかるか分からないのが怖い」ならお金、「兄弟がどう思うか分からない」なら家族の論点です。
- 2. 家のいまの状態と、年間の維持費。毎年4〜6月頃に届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)と火災保険の保険証券を手元に集めるだけで、「残す」のコストの大半が見えます。
- 3. 期限のあるものはどれか。後述する制度の期限、雨漏りなど建物の劣化、親の介護や住まいの予定。「いつまでも保留できるもの」と「期限があるもの」を分けます。
この3つは、家族に話す前に一人でも確認できることばかりです。
選択肢は4つ。売る・貸す・管理・保留を同じテーブルに並べる

四つの選択肢は、どれが正解という性質のものではありません。
家の状態・立地・家族の事情によって、向き不向きが変わります。
選択肢 | 向いている状況 | 注意したい点 |
|---|---|---|
売る | 今後だれも住む予定がなく、維持の負担や心配を手放したい | 片付け・名義・家族の合意という準備が先。急いで決める必要はない |
貸す | 立地や建物の状態に賃貸の需要があり、所有は続けたい | 修繕や入居者対応の手間、空室の期間。需要があるかの見極めが必要 |
管理する(残す) | 将来だれかが住む・使う可能性が残っている | 税金・保険・手入れの負担が続く。「だれが担うか」を決める必要がある |
保留する | 情報や家族の合意がまだそろっていない | 「決めない」と「放置」は別物。最低限の管理と、期限の確認はセットで |
ポイントは、いまの自分が「どれを選ぶか」ではなく、「それぞれを選んだ場合に何が起きるか」の材料がそろっているかを見ることです。
材料が足りない選択肢があれば、それを埋めることが次の一歩になります。
四つを比べる順番にもコツがあります。
最初に「保留した場合」を考え、次に「管理を続けた場合」、その次に「貸した場合」、最後に「売った場合」の順で材料を集めると、心理的な抵抗が小さく、途中で止まりにくくなります。
手放す検討から始めると気持ちが先にすくんでしまう方が多いためです。
「保留」も立派な選択肢。ただし「放置」とは分ける
意外に思われるかもしれませんが、私たちは「保留」を四つの選択肢の一つとして堂々と数えています。
家族の気持ちが追いつくまで決めない期間は、多くのご家庭で必要だからです。
ただし、保留と放置は違います。
保留は「管理する人と頻度を決めた上で、結論を出さない」こと。放置は「だれも見ていない状態が続く」ことです。
放置側に傾くと、制度の面でも影響が出ることがあります。
2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法では、窓が割れたままになっているなど管理が行き届かない空き家を市区町村が「管理不全空家」として指導・勧告できるようになり、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例の対象から外れる場合があります(参照元:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律について」、確認日2026年6月8日)。
保留中の最低限の管理とは、たとえば月1回程度の換気と通水、郵便物の回収、庭木が隣家や道路にはみ出していないかの確認、台風のあとの屋根や雨どいの見回り、といった内容です。
自分たちで通うのが難しければ、こうした作業を代行する空き家管理サービスに委託する方法もあります。
これは「放置すると大変だ」と怖がらせたいのではなく、月1回の換気や庭木の手入れといった最低限の管理が続いていれば、保留は十分に成立するという話です。
遠方で管理が難しい場合の考え方は、遠方の実家を管理しきれないときの判断順で詳しく整理しています。
気持ちの論点とお金の論点を、紙の上で分ける

売るか残すかの迷いが堂々巡りになる最大の原因は、性質の違う論点が混ざることです。
試しに、頭の中にあるものを「気持ちの論点」と「お金の論点」の2列に書き出してみてください。
「思い出のある家を手放したくない」
「親の気持ちを考えると言い出しにくい」
「兄弟がどう反応するか不安」——これらは気持ちの論点です。
気持ちの論点は、お金の計算で打ち消さなくていい。
残したい気持ちは、それ自体が尊重されるべき判断材料です。
一方、「毎年の税金と保険はいくらか」
「直すとしたらどこか」
「売る・貸すならどの程度の見込みか」はお金の論点で、こちらは感情ではなく調べれば答えが出るものです。
2列に分けて眺めると、「気持ちはまだ決まらないが、お金の確認は今日から進められる」ことに気づきます。
家族と話すときも、相手の気持ちの論点を数字で否定しない、という約束をするだけで、話し合いの空気は大きく変わります。
残す場合の現実コスト。何にいくらかかっているかを確認する
「残す」
「保留する」を選択肢として真剣に比べるには、維持にかかっている金額を把握する必要があります。
金額は家によって大きく異なるため、ここでは何を・どこで確認できるかを一覧にします。
費用の項目 | 確認する方法 |
|---|---|
固定資産税・都市計画税 | 毎年4〜6月頃に届く納税通知書(課税明細書) |
火災保険・地震保険 | 保険証券。住む人がいなくなると契約条件が変わる場合があるため保険会社にも確認 |
電気・水道の基本料金 | 検針票や口座の引き落とし明細 |
庭木・草刈り・換気などの手入れ | 自分で通うか、管理サービスに委託するかで変わる |
修繕費(雨漏り・給湯器など) | 発生時にまとまって掛かるため、家の築年と状態から見込む |
なお、税金については知っておきたい仕組みがあります。
住宅が建っている200平方メートル以下の土地は、固定資産税の課税標準が6分の1になる「小規模住宅用地の特例」が適用されています(参照元:総務省「固定資産税制度について」、確認日2026年6月8日)。
つまり家を残していること自体が、土地の税負担を抑えている面もあるのです。
「残す=損」と単純には言えない理由の一つで、だからこそ感覚ではなく実額の確認が大切になります。
売る方向に傾いてきたら、先に整理しておきたい3点
比較の結果、売る方向に気持ちが傾いてきた場合も、いきなり査定ではなく、次の3点を先に整理しておくと後の流れがスムーズです。
- 片付け:すべて終わらせる必要はありません。先に確認したいのは、権利証や通帳などの重要書類と貴重品の所在だけです。荷物が残ったまま相談を始めることは普通にあります。
- 名義:家と土地がだれの名義かを、納税通知書か、法務局で取得できる登記事項証明書(窓口請求で1通600円)で確認します。亡くなった祖父母の名義のままだった、というケースは珍しくありません。名義の確認方法は相続前に親の家のことで確認しておきたいことで詳しく解説しています。
- 家族の合意:最初から結論の合意を目指す必要はありません。まず「同じ情報を見る」ことから始めます。兄弟間で話が止まりやすい構造と進め方は兄弟で実家の話が進まないとき、最初にそろえる情報にまとめています。
期限のある制度だけは、頭に入れておく

保留を選ぶ場合でも、期限のある制度だけは知った上で保留することをおすすめします。
「知った上で決めない」のと「知らないまま過ぎる」のとでは、意味がまったく違うからです。
相続登記の義務化。2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務になりました。
正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり、2024年4月1日より前に相続した分も2027年3月31日までに登記が必要です(参照元:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」、確認日2026年6月8日)。
空き家の3,000万円特別控除。相続した昭和56年5月31日以前建築の家とその敷地を売ったとき、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円(2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は最高2,000万円)が控除される特例があります。
対象になるのは2027年12月31日までの売却です(参照元:国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、確認日2026年6月8日)。
ただし、どちらの制度も適用要件が細かく定められており、ご自身のケースに当てはまるかどうかの判断には、税理士・司法書士など専門家への確認が必要です。
当相談室でも、必要に応じて専門家との連携を含めて整理をお手伝いしています。
松戸・東葛の親の家は、駅距離と築年数で「残す合理性」が変わる
親の家が松戸・柏・流山・市川・船橋・鎌ケ谷・我孫子・野田といった松戸・東葛エリアにある場合、四択の比較には地域ならではの事情が加わります。
千葉県の空き家は39万4,100戸、空き家率は12.3%で、全国の13.8%より低い水準です。
一方で、賃貸・売却用などを除いた「その他空き家」は15万8,500戸と、前回調査から約1万4,100戸増えています(参照元:千葉県「令和5年住宅・土地統計調査 千葉県確報集計結果の概要」、確認日2026年6月8日)。
空き家率が低い地域だからこそ、行き先の決まっていない家が静かに増えている、と読むべき数字です。
このエリアの特徴は、駅徒歩圏の住宅地とバス便の住宅地が一つの市の中に混在していることです。
常磐線・新京成線などの駅から歩ける立地なら「貸す」が現実的な比較対象になることがあります。
一方、バス便で築年数が古い場合は、貸す・売るの見込みと管理の負担を丁寧に見比べる必要があります。
同じ「親の家」でも、駅距離と築年数によって四択の中身がまったく変わるのが、このエリアの実情です。
松戸・東葛エリアの親の家については、地域専門の相談窓口で、立地を踏まえた状況整理ができます。
いま決めなくていいこと
ここまで読んで「確認することが多い」と感じたかもしれません。
逆に、いま決めなくていいことも挙げておきます。
- 売る・売らないの最終結論。比較材料がそろう前に出した結論は、たいてい揺り戻しが来ます。
- 査定額を取りに行くこと。査定は便利な道具ですが、気持ちとお金の整理より先に取ると、金額だけが一人歩きしがちです。
- 親や兄弟を説得すること。説得は、同じ情報を見たあとで考えれば十分です。
- リフォームや解体の判断。方向性が決まる前に着手すると、選択肢を狭めることがあります。
家族に共有したい3つのポイント
この記事の内容を家族に話すなら、次の3点だけで十分です。
- 選択肢は「売るか残すか」の二択ではなく、売る・貸す・管理・保留の四択であること。
- 話すときは気持ちの論点とお金の論点を分けること。気持ちを数字で否定しない。
- 制度には期限のあるものが一部あること。だから「いつまでに何を確認するか」だけ先に決める。
結論を急がせる材料ではなく、「まだ決めなくていいが、確認は始められる」ことを共有するための3点です。
片付け前・相続前・家族未相談でも相談できます
当相談室への相談に、準備は要りません。
家の中が片付いていなくても、名義が祖父母のままでも、相続がまだ起きていなくても、家族にまだ何も話していなくても大丈夫です。
「売るか残すか迷っている」という、まさにこの記事の状態のままで相談していただけます。
相談したからといって売却を前提に話が進むことはありません。
売る・貸す・管理・保留の比較材料を、あなたの家の実情に合わせて一緒に並べるのが私たちの役割です。
相談前チェックリスト
相談の際、以下がそろっていると整理が早く進みます。
そろっていなくても相談できます。
- 固定資産税の納税通知書(課税明細書)が手元にあるか
- 家のおおよその築年と、分かる範囲の傷み具合
- 最後に家の中を見たのはいつか
- この件に関わりそうな家族はだれか
- 自分の引っかかりを一言で言うと、気持ち・お金・家族のどれか
まとめ:比べる前に、今の状況を整理する
売るか残すかで止まったら、まず二択を四択に開く。
気持ちの論点とお金の論点を分けて書き出す。
期限のある制度だけ頭に入れて、必要なら堂々と保留する。
この順番で進めば、迷いは少しずつ「比較できる形」に変わっていきます。
売る・貸す・管理・保留を比べる前に、今の状況を整理する。
売るかどうかを今決める必要はありません。
まずは30秒で、親の家の今の状況だけ整理してみてください。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.売るか残すか、結論だけ先に教えてもらえますか?
Q.「貸す」は現実的な選択肢になりますか?
Q.保留のまま数年置いても大丈夫ですか?
Q.家族で意見がそろっていなくても相談できますか?
Q.相談したら売却をすすめられませんか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、売る前の状況整理からご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る親の家のこと、まだ決めきれなくても大丈夫です。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
30秒で親の家の状況整理売却前提なし。相談だけでも大丈夫です。
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