祖父名義のままの実家。相続人が増えてしまったときの進め方
まず確認したいこと
相続人が多くても、まず人数の確認から始められます。
実家の登記事項証明書を取り寄せたら、祖父の名義のままだったという場合、まず戸籍を集めて今の相続人が何人いるかを確認するところから進められます。相続人が多くても、相続分の譲渡や相続人申告登記など、期限に間に合わせるために使える制度が複数用意されています。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年8月6日
読了目安
約14分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
実家の名義を確認しようと法務局で登記事項証明書を取り寄せたら、何十年も前に亡くなった祖父の名前がそのまま載っていた。
そんな場面から、この記事は始まります。
「一体何人の親戚に連絡すればいいのか分からない」「会ったこともないいとこに連絡するのが怖い」という声を、当相談室でもよく聞きます。
結論から言うと、相続人が増えている状態でも、いきなり全員に連絡して合意を取り付ける必要はありません。
まず戸籍を集めて相続人が何人・誰なのかを確認し、その人数と関係性に応じて進め方を選べます。
相続人全員の合意がすぐにまとまらない場合でも、期限に間に合わせるための「相続人申告登記」という制度も用意されています。
この記事では、増えてしまった相続人をどう説得するかではなく、増えた相続人を整理して見える化するための手順と、使える制度を伝えます。
売るかどうかは、今決めなくて大丈夫です。
なぜ祖父の名義のままになりやすいのか
祖父の名義のまま何十年も相続登記がされていないケースは、決して珍しいことではありません。
最初の相続(一次相続)が起きたときに遺産分割協議がまとまらないまま、次の相続(二次相続)が発生してしまうことがあります。
これを「数次相続」と呼びます。
数次相続と代襲相続の違い
数次相続とよく混同される言葉に「代襲相続」があります。
数次相続は、最初の相続の遺産分割が終わる前に相続人自身が亡くなり、次の相続が重なって発生することを指します。
代襲相続は、相続が始まる前に本来の相続人がすでに亡くなっていた場合、その子どもなどが代わりに相続人になることを指します。
似た言葉ですが相続が起きる順番が違うため、必要な戸籍の集め方も変わります。
用語 | 意味 |
|---|---|
被相続人 | 亡くなって財産を残した人(この記事では祖父や、その後に亡くなった子) |
数次相続 | 最初の相続の遺産分割が終わる前に、相続人自身が亡くなり次の相続が重なって発生すること |
代襲相続 | 相続が始まる前に本来の相続人がすでに亡くなっていた場合、その子などが代わりに相続人になること |
相続人申告登記 | 遺産分割がまとまらなくても、自分が相続人であることを法務局に申し出て登記義務を暫定的に果たす制度 |
出典: 法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」、2026年8月5日確認
祖父の代の家は、相続登記が義務ではなかった時期に建てられ、名義変更をしないまま何十年も過ごせてしまう不動産でした。
2024年4月1日より前は相続登記の申請に期限がなく、放置していても罰則はありませんでした。
その間に子の世代が亡くなり、さらに孫の世代に相続人が広がっていくことで、面識のない親族同士が一つの家の権利者になってしまいます。
誰か一人が悪いわけではなく、名義変更を先送りにできる制度だったことが、数次相続を広げてきた背景です。
まず確認すること3つ
祖父の名義のままだと分かった時点で、まず確認したいことは3つあります。
- 祖父の名義のまま、これまでに何回相続が起きているか(一次相続で止まっているのか、二次相続・三次相続まで進んでいるのか)
- 今の時点で、相続人が何人・誰なのかを戸籍で確認できているか
- その相続人の中に、連絡先が分からない人や、行方が分からない人がいないか
この3つが分かるだけで、次にどの制度を使えばよいかの見通しが立ちます。
1つ目は、登記事項証明書に記載された祖父の死亡日と、その後に亡くなった家族の関係を照らし合わせれば、おおよその見当がつきます。
2つ目は、専門家に依頼しなくても、まず市区町村役場で戸籍を請求してみることから始められます。
3つ目は、最後に会った時期や年賀状のやり取りの有無など、ごく身近な情報から手がかりを整理するだけでも構いません。
今すぐ決めなくていいこと
相続人が増えていると分かると、「早く全員をまとめなければ」と焦りたくなります。
ですが、今すぐ決めなくていいこともあります。
- 実家を売るか残すかの結論
- 遺産分割協議を一度で全員分まとめて終わらせること
- 会ったことのない親族に、いきなり売却の話を持ちかけること
相続登記の申請義務には期限がありますが、遺産分割協議そのものがまとまるまでの期限ではありません。
期限に間に合わせるための制度を使えば、じっくり進めることもできます。
相続登記の期限や過料の詳しい内容は、相続登記が終わっていない親の家は、売却相談できるのかでも整理しています。
相続人を確認する方法(戸籍謄本と法定相続情報証明制度)
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を集める
相続人を確定させるには、祖父の出生から死亡までの戸除籍謄本と、その後亡くなった各世代の戸除籍謄本を集める必要があります。
戸籍の証明書には戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)、除籍謄本、改製原戸籍謄本の3種類があり、手数料がそれぞれ異なります。
証明書の種類 | 手数料(1通) |
|---|---|
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | 450円 |
除籍謄本(除籍全部事項証明) | 750円 |
改製原戸籍謄本 | 750円 |
出典: 松戸市「各種証明書手数料」、2026年8月5日確認
祖父の代から数次相続が起きている場合、集める戸籍の通数も増えるため、まとまった費用と時間がかかることを見込んでおくと安心です。
法定相続情報証明制度を使うと何度も出し直さずに済む
集めた戸籍謄本の束は、相続登記だけでなく、銀行口座の解約や相続税の申告など複数の手続きで必要になります。
法務局の「法定相続情報証明制度」を使うと、相続関係を一覧にした図を法務局が認証してくれるため、その写しを何度でも無料で発行してもらえます。
複数の手続きで戸籍の束を出し直す必要がなくなるため、相続人が多い数次相続のケースほど活用する価値があります。
出典: 法務局「法定相続情報証明制度」について(2024年4月1日更新)、2026年8月5日確認

相続人の中に連絡が取れない人がいる場合
音信不通・行方不明の相続人がいるとき
数次相続が進むと、相続人の中に長年連絡を取っていない親族や、住所が分からない親族が含まれることがあります。
単に連絡先が分からないだけであれば、戸籍の附票を取り寄せることで住所を追跡できる場合があります。
住民票上の住所に手紙を送っても応答がなく、生活の実態も確認できない状態が続く場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人は、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加し、家庭裁判所の許可を得たうえで不動産の売却などを行うことができます。
申立てには収入印紙800円と郵便切手のほか、財産管理に必要な費用として20万円から100万円程度の予納金を求められることがあります。
出典: 裁判所「不在者財産管理人選任」、2026年8月5日確認
この手続きが必要になるかどうかは、まず戸籍と附票でどこまで追跡できるかを確認してから判断しても遅くはありません。
遺産分割協議をまとめやすくする方法
相続人の数を減らす「相続分の譲渡」
相続人が数十人規模に増えている場合、全員で一度に話し合いをまとめるのは容易ではありません。
そこで使われる方法の一つに「相続分の譲渡」があります。
これは、自分の相続分(遺産全体に対する割合的な権利)を、他の相続人などに譲り渡す手続きです。
権利を譲り受けた人が代表して協議に参加できるようになるため、実際に協議に加わる人数を減らせます。
ただし実家など特定の財産だけを指定して譲り渡すことはできず、遺産全体に対する割合的な権利をまとめて譲渡する点に注意が必要です。
被相続人に借金があった場合、譲渡してもその返済義務からは逃れられない場合があるため、専門家に確認しながら進める必要があります。
民法では、遺産分割について共同相続人間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人がその全部または一部の分割を家庭裁判所に請求できると定められています。
出典: e-Gov法令検索「民法」第907条、2026年8月5日確認
遺産分割の主な方法
方法 | 特徴 | 数次相続で増えた相続人の場合の注意点 |
|---|---|---|
代償分割 | 1人が実家を相続し、他の相続人に現金(代償金)を支払う | 相続人の人数が多いほど、支払う代償金の総額も大きくなりやすい |
換価分割 | 実家を売却して現金化し、相続分に応じて分ける | 相続人全員の実印・印鑑証明が必要になるため、人数分の手続きが発生する |
共有分割 | 相続人複数名の共有名義のまま残す | 将来また相続が起きるたびに権利者が増え、数次相続が繰り返されやすい |
実家のような分けにくい財産では、この3つのいずれかを選ぶことが多くなります。
共有名義のまま実家を残す場合の注意点は、共有名義の実家で確認したいことでも詳しく解説しています。
相続人が多い数次相続では、共有名義のまま残すと次の世代でさらに権利者が増えてしまうため、代償分割か換価分割で区切りをつけておく方が、後の世代の負担を減らせます。
ただしどの方法を選ぶかは、家族の状況や資金力によって変わるため、司法書士や税理士に確認しながら判断することをおすすめします。
期限に間に合わないときに使える「相続人申告登記」
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になり得ます。
2024年4月1日より前に発生していた相続についても、2027年3月31日までにこの義務が適用されます。
数次相続で相続人が多く、期限内に遺産分割協議や相続分の譲渡がまとまらないこともあります。
そのような場合の救済措置として、法務局に「自分がその不動産の相続人の一人である」ことを申し出る「相続人申告登記」という制度が設けられています。
相続人申告登記は特定の相続人が単独で申し出ることができ、他の相続人の分をまとめて代理で申し出ることもできます。
申出の手続きでは押印や電子署名が不要で、Webブラウザ上で手続きすることもでき、登録免許税もかかりません。
ただし相続人申告登記は不動産の権利関係を公示するものではないため、実際に実家を売却する段階になれば、あらためて遺産分割に基づく相続登記の申請が必要になります。
数次相続で第一次相続人と第二次相続人を両方兼ねる立場の人が申し出るケースなど、家族構成に応じた申出方法も用意されています。
出典: 法務省「相続人申告登記について」(令和8年3月24日更新)、2026年8月5日確認
相続人申告登記をした後、遺産分割がまとまったらどうするか
相続人申告登記はあくまで暫定的な手続きであり、最終的な決着ではありません。
その後、時間をかけて遺産分割協議がまとまった場合や、相続分の譲渡で相続人が整理できた場合は、あらためてその内容にもとづく相続登記を申請することになります。
先に相続人申告登記で過料のリスクを避けておき、その間にじっくり話し合いを進めるという順番も選べます。
売る・貸す・管理・保留をどう考えるか
相続人の整理が見えてきたら、実家をどうするかは売る・貸す・管理・保留の4つで並べて考えられます。
相続人が多い数次相続の場合、貸す・管理・保留という選択肢は、その分だけ管理費用や固定資産税の負担を誰がどう分けるかという新しい論点を生みます。
売却して現金化する換価分割は、相続人ごとの取り分を金額で明確にできるため、数次相続で関係者が多い場合には選ばれやすい方法です。
いずれの選択でも名義が祖父のままでは実行できないため、まず相続登記(または相続人申告登記)を済ませる必要があります。
相続の間隔が短い場合の相続税の論点
祖父の相続から10年以内に、その相続人自身の相続が発生している場合、相続税の計算で「相次相続控除」という仕組みが使えることがあります。
これは、前の相続で課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した金額を、今回の相続税額から差し引く制度です。
相続税には基礎控除として3,000万円に600万円×法定相続人の数を加えた金額があり、申告期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
取得費が分からない場合に税額がどう変わるかは、実家の取得費がわからない。買った値段が不明なときに変わることで解説しています。
相次相続控除が使えるかどうか、法定相続人の数がどう数えられるかは個別の家族構成によって変わるため、税理士への確認が必要です。
出典: 国税庁 No.4168「相次相続控除」、2026年8月5日確認
出典: 国税庁 No.4152「相続税の計算」、2026年8月5日確認
出典: 国税庁 No.4205「相続税の申告と納税」、2026年8月5日確認

家族に共有するなら、この3点だけ
親族全員に一度に連絡する前に、まず近い家族だけで共有しておきたいことが3つあります。
- 祖父の名義のまま、今何次相続まで進んでいるか
- 戸籍で分かった相続人の人数と、連絡が取れる人・取れない人の内訳
- 相続分の譲渡や相続人申告登記など、使える制度が複数あること
この3点があるだけで、家族の間で「何が分かっていて、何がまだ分からないのか」を共有でき、いきなり売却や分割の結論を迫らずに話し合いを始められます。
松戸・東葛で祖父名義の家が多い理由
松戸・東葛エリアには、高度経済成長期に建てられた戸建て住宅が数多く残っています。
令和5年の調査では、松戸市の空き家数は3万7,370戸、空き家率は14.0%で、千葉県平均の12.3%を上回っています。
出典: 千葉県「令和5年住宅・土地統計調査 確報集計結果」、2026年8月5日確認
祖父母の代に建てられた家ほど、相続登記が義務ではなかった時代が長く、名義変更をしないまま次の世代に引き継がれやすい傾向があります。
さらに松戸・東葛エリアは、進学や就職で子・孫の世代が東京都・神奈川県・埼玉県など周辺の都県に散らばって住んでいることが多く、相続人同士が顔を合わせる機会そのものが少なくなりがちです。
「実家には長年誰も住んでいないが、名義が誰になっているか分からない」という相談は、松戸・東葛のような戦後に宅地化が進んだエリアで特に多く聞かれます。
松戸・東葛で実家を相続した際に最初にやることは、松戸・東葛で実家を相続したら、最初にやることでも整理しています。
このような状態でも相談できます
相続人が何人いるか分からない状態でも、相談することはできます。
戸籍を集め切っていなくても、遺産分割協議がまとまっていなくても構いません。
実家の片付け前でも相談できます。
家族の一部にしかまだ話していなくても相談できます。
相続の手続きがすべて終わっていなくても、途中の段階から相談できます。
売ると決めていない段階でも、今分かっている範囲の情報を整理するところから始められます。
必要に応じて、司法書士・税理士・弁護士など専門家への橋渡しも行っています。
松戸・東葛の相談窓口はこちらから確認できます。
相談前チェックリスト
相談の前に、すべてを完璧に調べておく必要はありません。
分かる範囲だけでも、次の5つを確認しておくと、当日の話がスムーズに進みます。
- 登記事項証明書を取り寄せ、名義人が誰になっているか確認したか(窓口600円、オンライン請求なら郵送520円・窓口受取490円)
- 祖父の名義のまま、これまでに何回相続が起きているか把握しているか
- 戸籍を集め始めているか、まだこれからか
- 連絡が取れない・行方が分からない相続人がいるかどうか
- 相続人申告登記や相続分の譲渡など、名前だけでも制度を知っているか
出典: 法務省「登記手数料について」、2026年8月5日確認

まとめ
祖父の名義のまま何十年も経っている実家でも、進め方は整理できます。
まず戸籍を集めて相続人の数を確認し、連絡が取れない人がいないかを確かめることが最初の一歩です。
相続人が多くても、相続分の譲渡や代償分割・換価分割、相続人申告登記など、状況に応じて使える制度が複数用意されています。
売るかどうかは、今決めなくて大丈夫です。
相続人が何人いるか分からないまま、進め方だけ整理する。
まずは30秒で、親の家の今の状況を整理してみてください。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.祖父の名義のままだと、実家は絶対に売れないのですか?
Q.相続人の中に会ったことのない親戚がいますが、直接連絡しないといけませんか?
Q.相続人申告登記をすれば、相続登記をしなくてもよいのですか?
Q.相続人が行方不明の場合、手続きを進められませんか?
Q.家族にまだ何も話していませんが、相談してもいいですか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、今の状況からお気軽にご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る相続前でも、今確認すべきことは整理できます。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
相続前に整理する何も決まっていない段階でも、相談だけでも大丈夫です。
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