実家の取得費がわからない。買った値段が不明なときに変わること
まず確認したいこと
取得費が不明でも、書類次第で税負担を抑えられる場合があります。
実家を売ると税金がどれくらいになるか気になった場合、取得費が分かるかどうかで税額は大きく変わります。売買契約書や通帳の記録が残っていないか、まず確認できます。書類が見つからない場合も、売った金額の5%を取得費とみなす方法があり、相続した家ならではの特例との関係も整理できます。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年7月30日
読了目安
約14分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
実家を売る話が具体的になってくると、不動産会社や税理士から「取得費は分かりますか」と聞かれることがあります。
親がいつ、いくらでその家を買ったのか、書類を探しても見当たらない場合は少なくありません。
昭和の時代に建てられた家では、売買契約書どころか、購入した経緯を覚えている人がすでにいないこともあります。
取得費が分からないまま話を進めると、想定より税金が高くなるのではないかと気になった方もいるでしょう。
この記事で分かることは、次の3つです。
- 取得費が分からないとき、税額がどう変わるのか
- 取得費が分かる可能性がある書類と、その探し方
- 相続した実家だからこそ関係してくる、取得費に関する2つの制度
今すぐ売る・売らないを決めるための記事ではありません。
取得費が分からない状態のまま、まず何を確認すればいいかを整理します。
この記事の結論
実家の取得費が分からない場合、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。
(参照元: 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」、2026年7月29日確認)
ただし、この方法を使う前に、権利証や売買契約書、通帳の記録などが残っていないか確認しておく価値があります。
実際の取得費が分かれば、税額を抑えられる可能性があるためです。
さらに、相続した不動産には、取得費に関わる2つの制度があります。
ひとつは相続税の取得費加算の特例、もうひとつは空き家の3,000万円特別控除で、この2つは同じ売却について同時に使うことができません。
(参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年7月29日確認)
どちらが有利かは金額によって変わるため、最終的な判断は税理士への確認が必要です。
まずは、取得費に関わる書類が残っていないか確認するところから始められます。
なぜ「取得費がわからない」まま止まりやすいのか
実家の取得費が分からなくなる理由の多くは、購入時期の古さにあります。
昭和40年代から50年代にかけて家を買った世代では、売買契約書を長期間保管する習慣がそこまで根付いていませんでした。
親が複数回住み替えている場合、契約書がどちらの家のものか、家族にも判別がつかないことがあります。
購入時にローンを使わず現金で買っていた場合は、金融機関にも記録が残っていません。
「取得費が分からない」という状態は、決して珍しいことではなく、多くの相続で起きています。
問題になりやすいのは、取得費が分からないまま売却の話を進め、後から書類が見つかっても、すでに申告してしまっているケースです。
だからこそ、売却を具体的に進める前に、いったん書類の有無を確認しておく価値があります。
まず確認すること3つ
取得費に関する結論を急ぐ前に、次の3つを確認できます。
- 権利証(登記済証・登記識別情報通知)や、購入時の書類が家のどこかに残っていないか
- 通帳や金融機関に、購入時のローン(住宅ローン)に関する記録が残っていないか
- 登記事項証明書で、取得の時期や抵当権の設定があったかどうかを確認できるか
権利証・登記識別情報通知、購入時の書類
平成17年の不動産登記法改正より前に登記された不動産には、「登記済権利証」という書面が発行されています。
それ以降の登記では、12桁の符号が記載された「登記識別情報通知」に変わっています。
いずれも、購入価格そのものは記載されていませんが、いつ所有権を取得したかを示す手がかりになります。
耐火金庫や、実家の書庫、貸金庫などに保管されていないか、家族で分担して探せます。
通帳や住宅ローンの記録
親が住宅ローンを利用して家を買っていた場合、借入先の金融機関に返済記録や金銭消費貸借契約書が残っている場合があります。
通帳に、購入当時とみられるまとまった出金の記録が残っていないかも確認できます。
借入額そのものが取得費になるわけではありませんが、購入価格を推測する材料にはなります。
金融機関によって記録の保存状況は異なるため、まずは問い合わせてみることが確実です。
登記事項証明書での確認
登記事項証明書(登記簿謄本)には、取得の原因(売買・相続など)と日付が記録されています。
抵当権が設定されている場合は、その債権額(借入額)も確認できます。
登記所の窓口で請求する場合の手数料は600円で、オンライン請求を使うと郵送受け取りで520円、窓口受け取りで490円に下がります(2026年2月の法務局の案内による)。
(参照元: 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」、2026年7月29日確認)
取得費そのものは分からなくても、取得の時期が確定するだけで、次に説明する税額の計算に関わってきます。

書類・記録 | 見つかりそうな場所 | 分かること |
|---|---|---|
売買契約書・重要事項説明書 | 家庭内の書庫、貸金庫、購入時の不動産会社(現存する場合) | 実際の購入価格 |
住宅ローンの金銭消費貸借契約書 | 借入先の金融機関、家庭内の書類 | 借入額(購入価格の目安) |
登記済権利証・登記識別情報通知 | 家庭内の耐火金庫、貸金庫 | 取得の時期・名義 |
登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局(窓口・オンライン請求) | 取得時期・抵当権の設定額 |
固定資産税の課税明細書・名寄帳 | 市区町村の税務課 | 建物の建築時期・評価額 |
今すぐ決めなくていいこと
取得費が正確に分かるまで、売却の判断そのものを保留にする必要はありません。
実際の取得費が使えそうか、概算取得費(5パーセント)を使うことになりそうかは、書類を探しながら並行して考えられます。
税理士に相談するタイミングも、今すぐ決めなくて大丈夫です。
売る・貸す・管理・保留のどれを選ぶかも、この記事を読んだ時点で決める必要はありません。
まずは「取得費に関する書類があるかどうか」を確認するだけで、前に進められます。
取得費がわからないとき、税額はどう変わるのか
概算取得費5パーセントルールの計算例
取得費が分からない場合、または実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます。
(参照元: 国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」、2026年7月29日確認)
例えば、実家を3,000万円で売った場合、取得費が不明であれば、その5パーセントにあたる150万円を取得費とみなして計算します。
これに対して、実際の取得費(例えば購入価格1,500万円に諸費用を加えた額)が分かっていれば、その金額を取得費として使うほうが譲渡所得は小さくなり、税額は少なくなります。
つまり、取得費が分からないほど、税負担は増えやすい構造になっています。
概算取得費を使うときに含められない費用
概算取得費(5パーセント)を使う場合、相続人などが支払った登記費用や不動産取得税は、取得費に含めることができません。
(参照元: 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」、2026年7月29日確認)
実際の取得費を使う場合は、これらの費用も取得費に加えることができるため、この差も理解しておく価値があります。
区分 | 所有期間の目安 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|
長期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日時点で5年を超える | 15%+5%(別途、復興特別所得税2.1%) |
短期譲渡所得 | 譲渡した年の1月1日時点で5年以下 | 30%+9%(別途、復興特別所得税2.1%) |
(出典: 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」・国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」、2026年7月29日確認)
相続してすぐ売っても、税金は「短期」扱いにならない
「相続したばかりの家をすぐ売ると、短期譲渡になって税率が高くなるのでは」と心配する方がいます。
実際には、相続や贈与で取得した不動産は、亡くなった方(被相続人)が取得した時期がそのまま引き継がれます。
(参照元: 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」、2026年7月29日確認)
親がその家を30年前に買っていた場合、相続してすぐに売っても、所有期間は30年として計算され、長期譲渡所得として扱われます。
短期譲渡になるのは、被相続人自身の所有期間が5年以下だった場合に限られます。
この点を知らないまま、「急いで売ると税金が高くなる」と思い込んで判断を焦る必要はありません。
相続した家だからこそ関係してくる、取得費に関する2つの制度
取得費加算の特例
相続や遺贈により取得した財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合、納めた相続税額の一部を取得費に加算できます。
(参照元: 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、2026年7月29日確認)
相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内とされているため、目安としておおむね相続開始から3年10か月以内の譲渡が対象になります。
(参照元: 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」、2026年7月29日確認)
この特例は、相続税を実際に納めていることが前提です。
相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下で、そもそも相続税がかからなかった場合は、この特例の対象になりません。
(参照元: 国税庁「No.4152 相続税の計算」、2026年7月29日確認)
空き家の3,000万円特別控除
一定の要件を満たす場合、被相続人が住んでいた家屋やその敷地を売った際の譲渡所得から、最高3,000万円を控除できる特例があります。
(参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年7月29日確認)
令和6年1月1日以後の譲渡で、相続または遺贈により家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円までとなる点に注意が必要です。
対象期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡で、建物が昭和56年5月31日以前に建築されていることなど、複数の要件があります。
相続登記が終わっていない場合の売却相談については、相続登記が終わっていない親の家は、売却相談できるのかで扱っています。
取得費加算の特例と空き家の3,000万円特別控除は、同時に使えない
取得費加算の特例と、空き家の3,000万円特別控除は、同じ売却について同時に使うことができません。
空き家の3,000万円特別控除の要件には、「取得費加算の特例など、他の特例の適用を受けていないこと」が含まれているためです。
(参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年7月29日確認)
どちらを選ぶほうが税額を抑えられるかは、取得費の額、納めた相続税額、売却価格によって変わります。
この比較には個別の試算が必要になるため、税理士への確認をおすすめします。
項目 | 取得費加算の特例 | 空き家の3,000万円特別控除 |
|---|---|---|
効果 | 納めた相続税額の一部を取得費に加算 | 譲渡所得から最高3,000万円(相続人3人以上は2,000万円)を控除 |
期限の目安 | 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで | 令和9年12月31日までの譲渡 |
前提条件 | 相続税を実際に納めていること | 昭和56年5月31日以前建築など複数の要件 |
併用 | 空き家の3,000万円特別控除と同時に使えない | 取得費加算の特例と同時に使えない |

売る・貸す・管理・保留をどう考えるか
取得費が分からないという事情は、売る・貸す・管理・保留のどれを選ぶかを決める材料のひとつに過ぎません。
売却を選ぶ場合、取得費の扱いによって手取り額が変わるため、事前に確認しておく価値があります。
実際に売ると決めた場合の手取りの考え方については、親の施設費用が足りないとき、実家を今確認したいことでも扱っています。
貸す・管理を続ける場合は、取得費の論点は当面先送りにできます。
保留する場合も、書類だけ先に探しておけば、将来売る判断をするときに困りません。
どの選択肢を選ぶにしても、取得費に関する書類は早めに確認しておいて損はありません。
家族に共有するなら、この3点だけ
- 売買契約書や登記済証など、取得費が分かる書類が家のどこかにあるかどうか
- 実家をいつ、誰(親か祖父母か)が購入したか、家族の記憶をすり合わせておくこと
- 取得費が分からないまま売ると、税額が変わる可能性があること
この3点を先に共有しておくと、税理士に相談する段階になってから慌てずに済みます。
お金の話を家族で先に整理する進め方は、きょうだいで「お金の話」だけ先に整理しておく方法も参考になります。
このような状態でも相談できます
- 売買契約書や権利証を、まだ探せていない
- 取得費が分かるかどうか、自分では判断がつかない
- 相続税を払ったかどうか、あいまいなまま
- 家族の間で、まだこの話をしていない
- 売る・貸す・管理・保留、どれにするかまったく決めていない
書類がそろっていることは、相談の条件ではありません。
遠方の実家で書類を確認しづらい場合は、遠方の空き家、今確認することもあわせてご覧ください。
相続放棄を検討している場合は、相続放棄した実家は、誰が管理することになるのかで扱っています。
松戸・東葛エリアで実家の取得費がわからなくなりやすい理由
松戸・柏・流山など東葛エリアの戸建ての多くは、高度経済成長期からその後の宅地開発にかけて建てられています。
松戸市小金原や常盤平のように、昭和30年代後半から40年代にかけて大規模に開発された団地・住宅地は、その代表例です(松戸・小金原と常盤平、団地の街に実家がある人が知っておきたいこと)。
この時期に家を購入した世代は、契約書を紙で保管する以外に方法がなく、引っ越しや建て替えのたびに書類を紛失しやすい状況にありました。
令和5年住宅・土地統計調査によると、松戸市の空き家数は3万7,370戸、空き家率は14.0%で、全国平均の13.8%をやや上回ります。
(参照元: 千葉県「令和5年住宅・土地統計調査 確報集計結果」、2026年7月29日確認)
空き家が増える背景には、こうした古い世代の家をどう扱うか判断が追いつかない事情も重なっています。
取得費が分からないことは、東葛エリアの実家では特に起こりやすい事情だと考えられます。
松戸・東葛で実家を相続した直後にやることは、松戸・東葛で実家を相続したら、最初にやることにまとめています。

相談前チェックリスト
相談の前に、分かる範囲で次の点をメモしておくと、話がスムーズです。
すべて埋まっていなくても大丈夫です。
- 実家の所在地と、おおよその建築時期
- 売買契約書・重要事項説明書が見つかったかどうか
- 登記済権利証・登記識別情報通知が手元にあるか
- 住宅ローンを利用していたかどうか、借入先の金融機関
- 登記事項証明書を取得済みかどうか
- 相続税の申告・納税をしたかどうか
- 相続人の人数
- 売る・貸す・管理・保留のうち、今いちばん気になっているもの
まとめ
実家の取得費が分からないことは、珍しいことではありません。
売買契約書や通帳の記録、登記事項証明書を確認して、それでも分からない場合は、売った金額の5パーセントを取得費とすることができます。
相続した家であれば、取得費加算の特例や空き家の3,000万円特別控除という制度もありますが、この2つは同じ売却について同時に使うことができません。
どちらが有利かは、最終的に税理士に確認する必要があります。
取得費に関する書類を探すところから、まず始められます。
取得費がわからないことを理由に、売却の判断を先送りにする前に、今の状況を整理する。
今すぐ売る必要はありません。
まずは30秒で、親の家の状況を整理してみませんか。
松戸・東葛の親の家相談については、松戸・東葛の親の家相談についてもあわせてご覧ください。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.取得費が全く分からない場合、必ず概算取得費(5%)になりますか?
Q.相続してすぐ売ると、税率は短期譲渡になって高くなりますか?
Q.取得費加算の特例と空き家の3,000万円特別控除は、両方使えますか?
Q.取得費に関する書類を探す前に、家の片付けを終わらせる必要がありますか?
Q.取得費がわからないまま、相談窓口に相談してもいいですか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、今の状況からお気軽にご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る相続前でも、今確認すべきことは整理できます。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
相続前に整理する何も決まっていない段階でも、相談だけでも大丈夫です。
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