老人ホームへの一時帰宅・外泊のとき、実家の話をどう切り出すか
まず確認したいこと
外泊のたびに、家の結論を出さなくて大丈夫です。
老人ホームへの一時帰宅・外泊のたびに実家が気になっても、その日のうちに結論を出す必要はありません。限られた時間で何を確認し、親の帰宅願望を刺激せずにどう切り出すか、次の外泊に引き継ぐ簡単な記録の残し方まで、公的情報に基づいて整理しました。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年7月16日
読了目安
約14分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
施設の面会ノートに「次回外泊:8月13日〜14日」と書き込んだとき、頭に浮かぶのは親の体調のことだけではありません。
久しぶりに開ける実家の鍵、玄関にたまったチラシ、仏壇のろうそくの減り具合。
1泊2日、あるいは日帰りの外泊のあいだに、本当は確認しておきたいことがいくつもあります。
けれど、限られた時間の中で家の話を持ち出すと、親が「もう帰れないのか」と受け取ってしまうのではないか、という心配もあります。
この記事は、老人ホームなど施設に入っている親の一時帰宅・外泊のタイミングで、実家のことをどう確認し、どう切り出すかを整理するための記事です。
先に結論をお伝えすると、外泊のたびに家の結論を出す必要はありません。
この記事でわかることは、次の3つです。
- 一時帰宅・外泊の限られた時間を、何にどう使うかの考え方
- 親の帰宅願望を刺激しないための切り出し方の工夫
- 次の外泊まで実家の状況を引き継ぐ、簡単な記録の残し方
この記事の結論:外泊は「決める機会」ではなく「確認できる機会」
一時帰宅・外泊のときにやるべきことは、家をどうするか結論を出すことではありません。
年に数回しかない、実家の状況を実際に見て確認できる貴重な機会として使うことです。
売る・貸す・管理・保留のどれにするかは、今すぐ決めなくて大丈夫です。
その代わり、外泊のたびに「今回はここまで確認できた」を少しずつ積み重ねていく発想に切り替えると、気持ちが楽になります。
1回の外泊ですべてを終わらせようとしないことが、結果的に親にも自分自身にも負担の少ない進め方になります。
なぜ、一時帰宅・外泊のときだけ実家の話が浮かぶのか
ふだん施設にいる親と離れて暮らしていると、実家のことを考える機会そのものがありません。
面会は施設の中で完結し、家そのものを目にする機会がないためです。
ところが外泊で実際に実家に足を踏み入れると、郵便物の量、仏壇の様子、水回りの状態など、気になることが一気に目に入ってきます。
しかも、施設に戻る時間が決まっているため、限られた時間の中で何とかしなければという焦りも生まれます。
この「ふだんは考えられないのに、外泊のときだけ一気に気になる」という構造が、実家の話を止まりやすくしている一因です。
さらに、認知症の有無や体調によっては、家の話題そのものが親の気持ちを揺らす可能性もあります。
だからこそ、外泊という限られた機会をどう使うかを、あらかじめ考えておく価値があります。
まず確認すること3つ
一時帰宅・外泊のときにまず確認したいのは、次の3つです。

1. 今回の外泊は何泊で、いつ施設に戻るか
まず確認したいのは、今回の外泊の日程そのものです。
日帰りなのか、1泊なのか、年末年始のように数日にわたるのか。
日程によって、実家でできることの量はまったく変わります。
日帰りなら重要書類の在りかを確認するだけで手一杯かもしれませんし、数日あるなら郵便物の整理まで手が回るかもしれません。
先に「今回できること」の範囲を決めておくと、限られた時間の中で焦らずに動けます。
2. 親がこの外泊をどう感じているか
次に確認したいのは、親自身がこの一時帰宅をどう受け止めているかです。
「久しぶりに家に帰れてうれしい」と感じているのか、「また施設に戻るのがつらい」と感じているのか。
受け止め方によって、家の話をしてよいタイミングかどうかが変わります。
帰宅直後は気持ちが高ぶっていることが多いため、実家での時間の後半、落ち着いてから話すほうが伝わりやすい場合もあります。
認知症の症状がある場合は、外泊そのものが混乱や興奮のきっかけになることもあるため、施設の職員に事前に相談しておくと安心です。
3. 外泊中でないと確認できないことは何か
3つ目は、実際に家に行かないとわからないことを、事前にリストアップしておくことです。
たとえば、重要書類や通帳の保管場所、家の鍵の予備、雨漏りや水回りの様子などは、電話では確認しづらい項目です。
逆に言えば、名義の確認や制度の下調べなど、外泊を待たなくてもできることは先に済ませておけます。
「外泊中でないとできないこと」と「外泊を待たなくてもできること」を分けておくと、限られた時間を無駄にしません。
一時帰宅・外泊は、そもそもどんな仕組みなのか
老人ホームなど介護施設に入っている方の外出・外泊は、施設ごとの手続きで認められているのが一般的です。
厚生労働省の通知では、特別養護老人ホームについて、入所者の生活を施設内だけで完結させず、外出や外泊、地域行事への参加、友人宅の訪問など多様な機会を確保するよう施設側が努める旨が示されています(参照元: 厚生労働省「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準について」(老発第214号)、2026年7月14日確認)。
つまり、一時帰宅・外泊は例外的な特別対応ではなく、入所者の生活の一部として制度上も位置づけられているものです。
実際の運用は施設ごとに異なり、事前の届け出用紙の提出、食事のキャンセル連絡、外泊中の緊急連絡先の共有などが一般的に求められます。
年末年始やお盆のように家族が休みを取りやすい時期に外泊が集中しやすく、施設側もこの時期の対応に慣れていることが多いです。
外泊の可否や条件は、認知症の有無、医療的ケアの必要性、付き添いの有無などによって施設ごとに判断が変わります。
実際に申請できるかどうかは、必ず施設のケアマネジャーや相談員に個別に確認してください。
名義と、知っておきたい制度の期限
親が施設に入ったことをきっかけに、実家が誰も住まない状態になるケースは珍しくありません。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました(参照元: 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」、2026年7月14日確認)。
このうち、賃貸・売却用や別荘などを除いた「使う予定が決まっていない空き家」は385万6千戸にのぼります。
その多くが、誰かの実家であり、施設入所や入院がきっかけになったケースも含まれています。
外泊のたびに気になる名義の話も、外泊を待たずに確認できることのひとつです。
名義は、毎年4〜6月ごろに親宛てに届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)であれば費用をかけずに確認できます。
より正確に調べたい場合は、法務局の登記事項証明書を取得する方法もあります。
手数料は書面請求で1通600円、オンライン請求なら送付で520円、窓口交付で490円です(令和7年4月1日改定。参照元: 法務省「登記手数料について」、2026年7月14日確認)。
あわせて知っておきたいのが、相続登記の義務化です。
2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。
正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料の対象になることがあります(参照元: 法務省「相続登記の申請義務化について」、2026年7月14日確認)。
義務化より前に発生した相続も対象で、未登記の場合は2027年3月31日が申請期限とされています。
もうひとつ、老人ホーム入所後の家に関わる制度として、空き家の3,000万円特別控除があります。
将来、相続した家を売却する際、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。
ポイントは、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合でも、要介護認定等を受けての入所であることなど一定の要件を満たせば対象になり得ると国税庁が示している点です(参照元: 国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年7月14日確認)。
建物が1981年5月31日以前に建築されていること、売却期限が2027年12月31日までであることなど、細かな要件があります。
控除額は最高3,000万円ですが、2024年以降に相続した相続人が3人以上いる場合は、最高2,000万円になります。
入所の経緯や、入所後にその家を人に貸したり事業に使ったりしていないかという記録は、施設入所直後の今だからこそ残しておきやすい情報です。
ただし、これらの制度の適用可否は個別の状況によって変わるため、実際の判断は税理士や司法書士など専門家への確認が必要です。
認知症の症状が進み、本人の意思確認が難しくなった場合の売却手続きについては、認知症が進む前に。親の家は本人の意思がないと売れないで詳しく整理しています。
外泊の「限られた時間」を、逆算して使う
外泊の時間は、想像以上に短く感じられます。
移動、食事の準備、入浴や着替えの介助などを差し引くと、実家でゆっくり過ごせる時間は限られています。

だからこそ、外泊の前に「今回はここだけ見る」と的を絞っておくことが役立ちます。
すべてを一度に確認しようとすると、親との時間そのものが慌ただしくなってしまいます。
次の表は、外泊中に確認しておきたいことと、後回しにしてよいことを分けた一例です。
区分 | 内容 |
|---|---|
外泊中でないと確認しづらいこと | 重要書類・通帳・鍵の予備の保管場所、家の傷み具合(雨漏り・水回り・臭いなど)、仏壇や思い出の品の状態 |
外泊を待たなくてもできること | 名義の確認(固定資産税の納税通知書や登記事項証明書)、制度の下調べ、家族との予定の調整 |
今回は後回しにしてよいこと | 売る・貸す・管理・保留の結論、片付けをすべて終わらせること、家族全員の合意形成 |
帰宅願望を刺激しないための声かけの工夫
実家に関する話題で、もっとも気をつけたいのが帰宅願望への配慮です。
認知症のある方は、外泊によって環境が変わることで気持ちが不安定になったり、施設に戻ることへの抵抗が強くなったりすることがあります。
そのため、外泊中の会話は「この家をどうするか」ではなく、「今日は何を確認したいか」という具体的な作業の話にとどめる方が受け止めやすくなります。
たとえば、「この引き出し、大事な書類が入ってたよね」「この鍵、もう1つあったっけ」といった、暮らしの延長線上の会話であれば、売る話には聞こえません。
逆に避けたいのは、「この家、もう住まないんだから」のように、結論を先に押しつける言い方です。
施設の生活リズムに近い形で外泊を過ごすことも、混乱を防ぐうえで役立つとされています。
起床や食事の時間をふだんに近づけることは、外泊後の施設生活への切り替えをスムーズにするためにも意識したいポイントです。
親の反応が思わしくない場合は、その日は家の話を切り上げ、次回に持ち越してかまいません。
今すぐ決めなくていいこと
一時帰宅・外泊のたびに、次のようなことを決める必要はありません。
- 家を売るか、貸すか、管理を続けるか
- 片付けをすべて終わらせること
- 家族全員の意見をそろえること
- 不動産会社に査定を依頼すること
- 今回の外泊で答えを出すこと
外泊のたびに結論を急ごうとすると、親にとっても子世代にとっても、外泊そのものが負担の大きい時間になってしまいます。
今回はここまで、と区切りをつけてよいことを、まず自分に許可してください。
売る・貸す・管理・保留をどう考えるか
実家の選択肢は、売ることだけではありません。
大きく分けると、次の4つを並べて考えることになります。
選択肢 | 向いているケース | 外泊のたびにできる準備 |
|---|---|---|
売る | 親が家に戻る可能性が低く、管理負担を減らしたい | 名義や建築年の確認、重要書類の所在確認 |
貸す | 建物の状態が比較的よく、活用余地がある | 傷み具合の把握、修繕履歴を親に聞いておく |
管理する | 親が家に戻る可能性を残しておきたい | 誰が定期的に見に行けるかの確認 |
保留する | まだ気持ちや家族の話し合いが整っていない | 次にいつ見直すかだけ決めておく |
親が施設から家に戻る可能性がどの程度あるかによって、向いている選択肢は変わります。
この判断は医師や施設のケアマネジャーの見立ても関わるため、家族だけで決めきろうとしないことが大切です。
老人ホーム入所後の家についての基本的な整理は、親が施設に入ったあと、実家はいつから考えるべきかでも詳しく扱っています。
家族に共有するなら、この3点だけ
配偶者や兄弟姉妹に外泊時の様子を共有するなら、次の3点で十分です。
- 今回の外泊で確認できたこと・できなかったこと
- 親がこの外泊をどう感じていたか
- 次の外泊までに確認しておきたいこと
「そろそろ売った方がいい」という結論を先に共有すると、聞いた側が身構えてしまいます。
あくまで「今回わかったこと」という報告の形にすると、家族の間でも受け止めやすくなります。
次の外泊に引き継ぐ「記録」を残す
一時帰宅・外泊は、多くの場合、年に数回しか訪れません。
だからこそ、1回ごとの外泊で気づいたことを、次回に引き継ぐ形で残しておくことが役立ちます。

スマートフォンのメモアプリでも、手書きのノートでもかまいません。
「確認できたこと」「まだ確認できていないこと」「次回確認したいこと」「気になった親の様子」の4項目だけを、外泊のたびに数行書き留めておきます。
これがあるだけで、外泊のたびに一から思い出す手間がなくなり、兄弟姉妹と共有する際の材料にもなります。
次回の外泊前にこの記録を見返すことで、今回は何を優先すべきかも自然と絞り込めます。
このような状態でも相談できます
親の家これから相談室は、売ると決めていない段階からでも相談できます。
- 親が施設に入った後、まだ何も手をつけていない
- 外泊のたびに気になる点はあるが、記録程度しかない
- 片付けは何も進んでいない
- 家族にはまだ詳しく話していない
- 親が家に戻る可能性があるかどうか、まだわからない
- 売るか貸すか、方針は白紙のまま
この状態のままで大丈夫です。
外泊のたびにメモしてきたことを持ち寄っていただくだけでも、次に確認すべきことを一緒に整理できます。
親に切り出す前の心構えについては、実家の話を親に切り出せない人へもあわせてご覧ください。
松戸・東葛、一都三県で暮らす子世代が外泊のたびに直面すること
東京・神奈川・埼玉など一都三県に住みながら、松戸・柏・流山・市川・船橋・鎌ケ谷・我孫子・野田など東葛エリアの施設や実家に通う方は少なくありません。
外泊のたびに片道1〜2時間かけて実家へ向かい、短い時間で親を送り迎えし、また日常に戻る。
この往復そのものが、じわじわとした負担になります。
千葉県の令和5年住宅・土地統計調査によると、松戸市の空き家数は3万7,370戸、空き家率は14.0%で、千葉県全体の12.3%を上回っています(参照元: 千葉県「令和5年住宅・土地統計調査 確報集計結果」、2026年7月14日確認)。
施設入所をきっかけに人が住まなくなった家が、松戸・東葛エリアにも一定数あることがうかがえます。
外泊のたびに毎回長距離を移動している方にとっては、実家に行けるタイミング自体が限られているぶん、1回あたりで何を確認するかをあらかじめ決めておく効果はより大きくなります。
松戸・東葛エリアの相談については松戸・東葛の親の家相談についてをご覧ください。
相談前チェックリスト
相談前に、次の項目をわかる範囲で確認しておくと、その後がスムーズです。
確認項目 | 確認の手がかり |
|---|---|
親の施設への入所時期 | おおよその年月でよい |
親が家に戻る可能性があるか | 施設や主治医の見立て |
これまでの外泊で確認できたこと | 記録メモがあれば持参する |
家の名義が誰になっているか | 固定資産税の納税通知書や登記事項証明書 |
家族で話しているか | まだでも問題ない |
売る・貸す・管理・保留のどれが気になっているか | 今の時点の気持ちでよい |
すべて埋まっていなくても大丈夫です。
わからない項目があること自体が、次に確認すべきことを教えてくれます。
まとめ:外泊は、決める日ではなく確認できる日
一時帰宅・外泊は、親と離れて暮らす子世代にとって、実家の状況を確認できる数少ない機会です。
だからといって、その日のうちに家の結論を出す必要はありません。
今回の外泊で何を確認し、何を次回に持ち越すか。
この線引きさえできれば、親の帰宅願望を刺激することなく、少しずつ状況を整理していけます。
外泊のたびに慌てないよう、実家の状況を今のうちに整理する。
今すぐ売る必要はありません。
まずは30秒で、親の家の状況を整理してみませんか。
片付け前、相続前、家族未相談でも大丈夫です。
あわせて、親の家の相談ガイド一覧もご覧いただけます。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.外泊のたびに実家の話をすると、親が不安になりませんか?
Q.外泊中に実家のことを何も確認できなくても大丈夫ですか?
Q.家族にまだ話していなくても相談できますか?
Q.親が施設に入った後の家は、すぐに売却を考えたほうがいいですか?
Q.外泊の手続きについて、施設に確認したほうがいいことはありますか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、今の状況からお気軽にご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る親の家のこと、まだ決めきれなくても大丈夫です。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
30秒で親の家の状況整理何も決まっていない段階でも、相談だけでも大丈夫です。
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