施設入居後の実家、売るべきか保留すべきか
まず確認したいこと
今すぐ決めなくて大丈夫。戻る可能性・お金・税の期限を分けて確認を
「施設入所直後が売り時」と聞いて焦っていませんか。実家を売るか保留するかは、親が戻る可能性・施設費と維持費の負担・空き家の3,000万円特別控除の期限という3つの軸に分けて確認すれば、今すぐ結論を出さなくても大丈夫です。公的情報にもとづいて整理しました。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年7月20日
読了目安
約13分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
「入所直後が売り時」と書かれた記事を読んで、不動産会社に連絡しようとしたことはありませんか。
契約の書類のようなものを前にして、指が止まった。
そういう方もいるかもしれません。
本当に今なのか、まだ早いのか、判断する基準がわからないまま、時間だけが過ぎていく。
一方で、検索すると「様子を見たほうがいい」と書かれた記事も出てきて、どちらを信じればいいのかわからなくなる。
結論から言うと、施設入居後の実家は、「売る」か「保留」かを一度に決める必要はありません。
「売るべきか保留すべきか」という一つの問いを、親が戻る可能性・お金の負担・税の期限という3つの軸に分けて確認すると、今の自分がどちら寄りなのかが見えてきます。
この記事では、次の3つを整理します。
- 親が家に戻る可能性を、どう確認すればいいか
- 施設費と実家の維持費を、今のペースで払い続けられるか
- 空き家の3,000万円特別控除の期限は、いつから数えるべきか
この記事の結論
施設入居後の実家について、今すぐ「売る」か「保留」かを決める必要はありません。
ただし、いつまでも先送りにできる話でもありません。
判断を難しくしているのは、「売るべきか」という問いの立て方そのものです。
実際には、戻る可能性・お金・税の期限という、性質のまったく違う3つの論点が混ざっています。
この3つを分けて確認すると、今すぐ動くべき部分と、まだ待ってよい部分が見えてきます。
まずは状況整理から始めて大丈夫です。
なぜ「売るべきか保留すべきか」で立ち止まりやすいのか
不動産会社のサイトを見ると、「施設入所直後が売り時」と書かれていることがあります。
一方で、親が家に戻る可能性を考えると、簡単には手放せないと感じる方も多いはずです。
さらに、空き家の3,000万円特別控除という税制上の後押しもあり、「早く決めないと損をするのでは」という焦りも生まれやすくなります。
戻る可能性、お金の負担、税制の期限という、判断のスピードも性質も違う3つの論点が同時に押し寄せてくるため、どれか一つだけを見て結論を急ぐと、あとで後悔しやすくなります。
全国の空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最多となっています。
(参照元: 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」、2026年7月19日確認)
施設入居をきっかけに家が空くこと自体は、珍しい出来事ではありません。
まずは3つの論点を切り分けることが、立ち止まらないための第一歩です。
親が施設に入った後の家について論点の全体像を先に知りたい場合は、親が施設に入った後の家、どうするかの全体地図もあわせて参考にできます。

まず確認すること3つ
詳しく説明する前に、確認しておきたい3つを整理します。
- 親が家に戻る可能性はどのくらいあるか
- 施設費と実家の維持費を、今のペースで払い続けられるか
- 空き家の3,000万円特別控除の期限は、いつから数えるべきか
この3つは、それぞれ別のタイミングで確認できます。
一度にすべてをそろえようとしなくても大丈夫です。

親が家に戻る可能性を、どう確認するか
「戻る可能性がある」という言葉は、家族によって重みがまったく違います。
主治医やケアマネジャーに、退所や在宅復帰の見通しを聞いたことがある方もいれば、まだ一度も聞いていない方もいるはずです。
要介護度が高くなるほど、在宅での生活に必要な介護体制も重くなるため、戻る可能性は在宅介護の準備状況とあわせて考える必要があります。
本人が「家に帰りたい」と話しているかどうかも、判断材料のひとつです。
ただし、本人の意思確認や今後の見通しは医療・介護の専門職に確認すべき領域であり、この記事だけで判断できるものではありません。
聞くタイミングに迷う場合は、ケアプランの更新時期や、施設で開かれるカンファレンス(本人・家族・施設スタッフが今後の方針を話し合う場)に合わせると、話を切り出しやすくなります。
「まだ何とも言えない」という回答が返ってくることも珍しくありません。
その場合は、今の時点では戻る可能性を「不明」のまま扱い、他の2つの論点から先に確認しても問題ありません。
「まだ確認できていない」という状態のまま、次の論点に進んでも問題ありません。
本人の判断能力がすでに低下している場合は、家の手続きに別の論点が加わるため、認知症が進む前に。親の家は本人の意思がないと売れないもあわせて確認しておくと安心です。
施設費と実家の維持費、いま払えるかどうかで考える
施設費と実家の固定資産税・光熱費・管理費を同時に払い続けることに、不安を感じている方は少なくありません。
ただし、介護保険サービスの自己負担には上限があり、青天井に増え続けるわけではありません。
厚生労働省の資料によると、要介護5の方が特別養護老人ホームの多床室(相部屋)を利用した場合、施設サービス費・居住費・食費・日常生活費を合わせた自己負担額の目安は月額約106,930円です。
ユニット型個室を利用した場合の目安は、月額約143,980円です。
(参照元: 厚生労働省「介護サービス情報公表システム|サービスにかかる利用料」、2026年7月19日確認)
さらに、介護保険サービスの利用者負担(1〜3割部分)の1か月の合計が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」という制度もあります。
上限額は所得によって段階が分かれており、住民税課税世帯(課税所得380万円未満)は世帯で月額44,400円、住民税非課税世帯の一部の段階では月額24,600円が上限の目安です。
(参照元: 前掲・厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、2026年7月19日確認)
この制度を利用するには、市区町村への申請が必要です。
なお、居住費や食費はこの上限の対象外ですが、所得や資産が一定以下の場合は「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という別の軽減措置が用意されています。
(参照元: 前掲・厚生労働省「介護サービス情報公表システム」、2026年7月19日確認)
実家側では、固定資産税・都市計画税・光熱費の基本料金・火災保険料・管理費などが、人が住んでいなくても発生し続けます。
施設費の自己負担分と実家の維持費を一度書き出して合計してみると、「払い続けられるかどうか」を感覚ではなく数字で確認できます。
維持費の内訳をさらに詳しく整理したい場合は、親の施設費と実家の維持費、二重の負担をどう整理するかもあわせて参考にできます。
空き家の3,000万円特別控除、期限はいつから数えるのか
「施設に入所してから3年以内に売らないと、特例が使えなくなる」という説明を見かけることがありますが、これは正確ではありません。
国税庁が案内する「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」の期限は、親が施設に入所した日からではなく、相続の開始があった日、つまり親が亡くなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
(参照元: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、2026年7月19日確認)
控除額は最高3,000万円で、被相続人居住用家屋および敷地を相続した相続人が3人以上いる場合は2,000万円が上限になります。
(参照元: 前掲・国税庁「No.3306」、2026年7月19日確認)
対象になる家屋は昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有登記された建物ではないことなどの要件もあります。
(参照元: 前掲・国税庁「No.3306」、2026年7月19日確認)
項目 | 内容 |
|---|---|
控除額 | 最高3,000万円(対象家屋を相続した相続人が3人以上の場合は2,000万円) |
対象家屋の主な要件 | 昭和56年5月31日以前に建築/区分所有登記されていない |
売却期限 | 相続開始日(親が亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
売却代金の上限 | 1億円以下 |
適用される譲渡の期間 | 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 |
(出典: 前掲・国税庁「No.3306」、2026年7月19日確認)
また、老人ホーム等に入所していたために相続開始の直前に住んでいなかった家でも、要介護認定などの要件を満たせば特例の対象になり得ます。
(参照元: 国税庁「No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋」、2026年7月19日確認)
ただし、要介護認定を受けていたかどうかは、施設に入所した時点ではなく、家に住まなくなる直前の状態で判定される点にも注意が必要です。
(参照元: 前掲・国税庁「No.3307」、2026年7月19日確認)

つまり、この特例を意識して急ぐべきタイミングは、親が施設に入所した直後ではなく、親が亡くなった後です。
施設入所中の今の段階で、慌てて売却先を決める必要はありません。
なお、相続によって不動産を取得した相続人には、相続開始を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。
(参照元: 法務省「相続登記の申請義務化について」、2026年7月19日確認)
空き家特例の期限も相続登記の義務も、起点はどちらも「相続開始日(親が亡くなった日)」であり、施設入所日ではありません。
建物や適用要件の細かな判定は個別の状況によって変わるため、実際に特例を使えるかどうかは税理士など専門家への確認が必要です。
今すぐ決めなくていいこと
以下は、今すぐ決めなくても大丈夫なことです。
- 売るか、保留するかの最終結論
- 親が施設からいつ戻るか、または戻らないかの断定
- 実家を売った代金の使いみち
- 兄弟や親族全員の意見を一致させること
- 不動産会社に査定を依頼するタイミング
これらは、状況が変わるたびに見直してよいものです。
今の時点でひとつに決めきる必要はありません。
売る・貸す・管理・保留を、施設入居後の視点で比べる
売る・貸す・管理・保留は、どれも一長一短であり、正解がひとつに決まっているわけではありません。
施設入居後という状況に絞って、それぞれの向き・不向きと注意したい点を整理します。
選択肢 | 向いているケース | 施設入居後に注意したい点 |
|---|---|---|
売る | 戻る可能性が低く、維持費の負担を早めに減らしたい場合 | 空き家特例の期限は死亡日基準。焦って安値で急ぐ必要はない |
貸す | 建物の状態がよく、当面戻る予定がない場合 | 賃貸に出すと空き家特例の対象外になる。将来売る予定があるなら検討が必要 |
管理 | 戻る可能性を読みきれず、判断を先送りしたい場合 | 管理の手間と費用が継続してかかる。年数が経つほど劣化のリスクが増える |
保留 | 情報を整理している段階で、まだ決めたくない場合 | 「保留」は放置とは違う。確認すべきことを確認したうえで待つ状態を指す |
「保留」は、何も考えずに放置することとは違います。
確認すべきことを確認したうえで、あえて今は動かないと決めることも、立派な選択のひとつです。
逆に「管理」を選ぶ場合は、庭木の手入れ・郵便物の確認・水道や電気の通水通電など、定期的な作業が発生し続けることを見込んでおく必要があります。
管理が行き届かず自治体から「特定空家等」の勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外され、税額が上がる可能性があります。
2023年の法改正により、勧告を受けた「管理不全空家等」についても同様に特例が除外される仕組みが加わりました。
(参照元: 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」、2026年7月19日確認)
ただし、これは長期間放置した場合のリスクであり、施設入所直後からすぐに問題になるものではありません。
管理を家族だけで続けるか、管理会社などに依頼するかも、あわせて検討したい論点です。
売る・貸す・管理・保留の比較をもう少し一般的な視点でも整理したい場合は、親の家を売るか残すか迷ったときの考え方もあわせて参考にできます。
施設に入った直後のタイミングそのものについて詳しく知りたい場合は、親が施設に入ったあと、実家はいつから考えるべきかもあわせて参考にできます。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の内容を家族と共有するとき、伝えることを絞るなら次の3点で十分です。
- 今すぐ売るか保留かを決める必要はないこと
- 戻る可能性・お金・税の期限は、それぞれ別の時間軸で確認できること
- 空き家特例の期限は、施設入所日ではなく親が亡くなった日から数えること
すべてを一度に説明しようとすると、話が長くなり伝わりにくくなります。
まずはこの3点だけを共有し、詳しい話は必要になったときに補足すれば十分です。
このような状態でも相談できます
以下のような状態でも、相談を受け付けています。
- 親がまだ施設に入所したばかりで、方針が何も決まっていない
- 親が家に戻るかどうか、まだわからない
- 実家の片付けがまったく終わっていない
- 兄弟姉妹にまだ何も話していない
- 相続はまだ発生しておらず、名義も親のまま
- 売る気があるかどうか、自分でもまだわからない
どれかひとつでも当てはまれば、相談を始めるタイミングとして早すぎることはありません。
松戸・東葛、一都三県で親の家を考えるときの注意点
東京・神奈川・埼玉など一都三県に住みながら、松戸・柏・流山・市川・船橋・鎌ケ谷・我孫子・野田といった東葛エリアの実家を抱えている方は少なくありません。
面会や通院の付き添いで施設に通う合間に、実家の判断まで進めるのは、時間的にも気持ち的にも負担が大きいものです。
特に松戸・東葛は昭和期に建てられた戸建てが多く、空き家の3,000万円特別控除の対象となりうる「昭和56年5月31日以前に建築された家屋」に当てはまるケースも珍しくありません。
(参照元: 前掲・国税庁「No.3306」、2026年7月19日確認)
一方で、建物の状態や再建築の可否は個別に確認が必要なため、松戸・東葛だからといって一律に判断できるわけではありません。
常磐線・新京成線・東武アーバンパークラインなど、駅からの距離や沿線によっても、管理のしやすさや将来の選択肢が変わってきます。
面会に通う頻度が高いエリアかどうかも、管理を自分たちで続けるか、外部に任せるかを考えるうえでのひとつの材料になります。
相談前チェックリスト
相談前に、以下を確認できる範囲でメモしておくと、話がスムーズに進みます。
- 実家の所在地と種類(戸建て・マンション・土地など)
- 名義が誰になっているか
- 親が施設に入所してからどのくらい経つか
- 親が家に戻る可能性について、医療・介護職から何か聞いているか
- 実家の固定資産税・管理費など、月々どのくらいかかっているか
- 片付けがどの程度進んでいるか
- 兄弟姉妹など、関わる家族が他にいるか
すべて埋まっていなくても、わかる範囲で構いません。
まとめ
施設入居後の実家について、「売るべきか保留すべきか」を一度に決める必要はありません。
戻る可能性、お金の負担、税の期限という3つの軸に分けて確認すると、今すぐ動くべき部分と、まだ待ってよい部分の輪郭がはっきりします。
特に空き家の3,000万円特別控除は、施設入所日ではなく親が亡くなった日から数える制度であるため、施設入所直後に焦って結論を出す理由にはなりません。
今の段階でわかっていることだけを整理し、わからないことはわからないまま相談してかまいません。
頭の中を整理する入り口として、50代のための親の家のこれから診断から始めることもできます。
松戸・東葛エリアの相談窓口については、松戸・東葛の親の家相談についてもあわせてご覧ください。
売るべきか保留すべきかを決める前に、今の状況を整理する。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.施設に入所したら、実家はすぐ売るべきですか?
Q.親が家に戻る可能性がある場合、売却は諦めたほうがいいですか?
Q.空き家の3,000万円特別控除は、施設に入所してから3年以内に売らないと使えませんか?
Q.施設費と実家の維持費を同時に払うのが苦しいのですが、相談できますか?
Q.家族の中で「売る」「保留」の意見がまだそろっていなくても相談できますか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、今の状況からお気軽にご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る親の家のこと、まだ決めきれなくても大丈夫です。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
30秒で親の家の状況整理何も決まっていない段階でも、相談だけでも大丈夫です。
関連ガイド

親が施設に入った後の家、どうするかの全体地図
親が施設に入った後の実家について、戻る可能性・お金・荷物・家族・税金という論点を整理し、それぞれを詳しく解説した記事へ案内するハブ記事です。今すぐ売る必要はなく、公的情報にもとづいて確認事項を整理します。
公開日:2026年7月19日
更新日:2026年7月21日

親が施設に入ったあと、実家はいつから考えるべきか
親が施設に入ったあとの実家は、すぐ売る必要はありません。名義・親の意向・管理の確認ポイントと、老人ホーム入所でも対象になり得る空き家の3,000万円特別控除まで、公的情報に基づいて整理します。
公開日:2026年5月24日
更新日:2026年6月20日

親の家を売るか残すか迷ったときの考え方
親の家を売るか残すか迷ったら、売る・貸す・管理・保留の四択で比較を。気持ちとお金の論点の分け方、維持費の確認方法、相続登記義務化や3,000万円特別控除の期限まで公的情報に基づき解説。今決めなくて大丈夫です。
公開日:2026年6月8日
更新日:2026年6月20日
