親が家に戻るかもしれない。実家を売らずに残すときの整理
まず確認したいこと
戻るかもしれない家は、管理を続ければ売らずに残せます
親が施設に入所し、いずれ家に戻るかもしれないと感じている場合、実家を売るか残すかは今すぐ決めなくても大丈夫です。管理の頻度・費用・担当者を家族で先に決めておけば、判断を保留したまま実家を安全に維持できます。管理を怠ったときの固定資産税の負担増リスクも、あわせて確認できます。
著者・編集
親の家これから相談室 編集部
確認
株式会社ホームセレクション(親の家・空き家相談窓口)
更新日
2026年7月26日
読了目安
約13分

まず確認すること
今の名義が誰になっているか
家族の中で誰が関わるか
片付け・管理・相続のどれが先か
施設のケアマネジャーとの面談で、こう言われたことはないでしょうか。
「回復の状態によっては、ご自宅に戻る生活も視野に入れておきましょう」
その一言で、空いたままのはずの実家が、急に「まだ手放せない家」に変わります。
鍵は誰が持っているのか、誰が定期的に見に行くのか、決めないまま時間だけが過ぎていく方も少なくありません。
この記事では、次の3つを整理します。
- 「戻る可能性」をどう見立てればいいか
- 売らずに残す場合、何をどのくらいの頻度で管理すればいいか
- 残しながら選択肢を広げる方法があるか
結論を先に言うと、実家を売るか残すかを今すぐ決める必要はありません。
必要なのは、決断ではなく、今の状態を安全に保つための管理と、家族での情報共有です。
この記事の結論
結論から伝えます。
親が家に戻る可能性が残っている場合、実家を売るかどうかは今すぐ決めなくて大丈夫です。
ただし、何もしないまま放置してよいわけではありません。
「残す」と決めたなら、残すなりの管理が必要になります。
戻る見通しが立たないまま管理をしない状態が続くと、家の傷みが進むだけでなく、自治体から管理不全空家等に指定され、固定資産税の負担が増える可能性があります。
大切なのは、売る・売らないの決断ではなく、「今は残す方向で、いつまで・どう管理するか」を家族で共有しておくことです。
なぜ「戻るかもしれない家」は判断が止まりやすいのか
何も決まっていない段階の家であれば、片付けや査定に向けて動き出せます。
しかし「戻るかもしれない家」は、そのどちらとも言い切れません。
売る決断をすると、親が戻る場所を自分たちで手放すことになるように感じてしまいます。
いつ戻るか分からない家をそのまま維持し続けることにも、費用と手間の面で不安が残ります。
本人の体調や介護度は変化するため、「戻れるかどうか」の見通し自体が数か月単位で変わることもあります。
見通しが変わるたびに方針を決め直すのは負担が大きいため、多くの家族が結論を先送りにしたまま、実家だけが空いた状態で残ります。
この記事で扱うのは、その状態を悪いことだと決めつけず、安全に維持するための具体的な整理です。
兄弟姉妹がいる場合、実家との距離や面会の頻度によって、戻る可能性への実感には差が出やすいものです。
頻繁に施設へ通っている人ほど「まだ分からない」と感じ、たまにしか関われない人ほど「もう難しいのでは」と感じることもあります。
この温度差自体は自然なことなので、どちらが正しいかを争うより、今の管理をどう分担するかに焦点を絞ったほうが話は前に進みます。
まず確認すること3つ
戻るかもしれない家について、最初に確認したいことは3つあります。
- 本人が家に戻る可能性は、医師やケアマネジャーの見立てでどの程度あるか
- 戻るまでの間、誰が、どのくらいの頻度で家を見に行けるか
- 戻れないと分かった場合の話し合いを、いつ・誰と行うか
この3つは、売る・売らないを決めるための質問ではありません。
今の家の扱い方を、家族の中ではっきりさせるための質問です。
特に3つ目は見落とされがちですが、戻れないと分かったときの進め方をあらかじめ決めておくと、状況が変わったときに慌てずに済みます。
「戻る可能性」をどう見立てるか
「戻れるかもしれない」という言葉には、幅があります。
リハビリを経て在宅復帰を目指している段階なのか、介護度が今より重くなれば難しくなる段階なのか、家族だけでは判断がつきにくいものです。
施設のケアマネジャーや相談員、主治医に、在宅復帰の見通しについて率直に聞いてよい場面です。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)には、退所後に在宅での生活が1か月以上継続する見込みを施設側が確認した場合に評価される「在宅復帰機能支援加算」という仕組みがあり、在宅復帰を前提にした支援を行っている施設もあります。
一方で、介護老人福祉施設の平均在所日数は1,284.5日、日数にしておよそ3.5年という調査結果もあり、長期の入所につながるケースも少なくありません。
(参照元: 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会第183回(令和2年8月27日)資料1「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について」、2026年7月25日確認)
同資料によると、介護老人福祉施設の退所者のうち65%以上が死亡を理由とした退所となっており、在宅復帰を前提にした退所は一部にとどまります。
見通しは変わるものなので、一度確認して終わりにせず、半年に一度など、定期的に確認し直す前提で考えるとよいでしょう。
ケアマネジャーや医師からの見立ては、あくまで現時点での見通しであり、確定した予定ではありません。
「絶対に戻れる」「絶対に戻れない」という断定的な答えを急いで求めるより、「今の時点でどちらの可能性が高いか」を確認する姿勢のほうが、現実的な整理につながります。

今すぐ決めなくていいこと
この段階で、今すぐ決めなくていいことを整理します。
- 実家を売るか、このまま残すかの最終結論
- 家財や荷物をすべて処分するかどうか
- 誰かに貸す場合の具体的な条件
- 親に「もう戻れない」と伝えること
- 兄弟姉妹全員の同意を今すぐ取り付けること
決めなくていいことまで背負い込むと、判断が重くなりすぎて、結局何も進まなくなります。
今の段階で決めるのは、戻る可能性がある間、家をどう安全に保つかだけで十分です。
売らずに残す場合、何をどのくらいの頻度で管理するか
「残す」と決めたら、次に必要なのは具体的な管理の中身です。
国土交通省が公開している空き家管理チェックリストでは、通気・換気、排水設備の通水、敷地内の清掃、庭木の枝の剪定、郵便物等の確認・整理を「定期的に」行うことが求められています。
(参照元: 国土交通省「空き家管理チェックリスト」、2026年7月25日確認)
冬期は給水管の元栓を閉める、擁壁がある場合は水抜き穴を清掃するといった、季節や立地による管理項目もあります。
下の表は、確認しておきたい管理項目の目安です。
管理項目 | 内容 | 放置した場合に起こりやすいこと |
|---|---|---|
通気・換気 | 部屋の窓を開け、空気を入れ替える | 湿気がこもり、カビや建材の傷みにつながる |
排水設備の通水 | キッチンやトイレの水を流す | 排水管の封水が切れ、悪臭や害虫の原因になる |
敷地内の清掃・庭木の剪定 | 落ち葉やごみの片付け、枝の剪定 | 景観の悪化や、隣家への越境トラブル |
郵便物等の確認・整理 | ポストの確認、不要な郵便物の整理 | 郵便受けの詰まりから、不在が外部に伝わりやすくなる |
外観・屋内の点検 | 窓・壁・屋根の破損、雨漏りの有無を確認 | 破損の放置が、倒壊等のおそれのある状態に進む |
すべてを家族だけで担うのが難しい場合は、空き家管理業者や修繕業者に依頼する方法もあります。
あわせて確認しておきたいのが、火災保険の契約内容です。
人が住まなくなった家は、契約している保険会社や商品によって、補償の範囲や告知の扱いが変わる場合があります。
契約内容は保険会社ごとに異なるため、住まなくなったことを保険会社に伝えるべきかどうかも含めて、契約している保険会社に直接確認しておくと安心です。

遠方に住んでいて頻繁に通えない場合の管理の考え方は、親が施設に入った後、誰も住まない実家の管理チェックリストでも詳しく整理しています。
空き家のまま放置するとどうなるか
「戻るかもしれないから、とりあえずこのまま」という状態が長引くと、行政の制度上のリスクが出てきます。
空家等対策の推進に関する特別措置法では、放置すれば倒壊等のおそれがある状態を「特定空家等」、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある管理不十分な状態を「管理不全空家等」として、市区町村が指導・勧告できる仕組みが設けられています。
(参照元: 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」、2026年7月25日確認)
2023年12月13日に施行された改正法により、管理不全空家等の区分が新設されました。
(参照元: 国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」、2026年7月25日確認)
特定空家等・管理不全空家等のいずれも、市区町村長から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れます。
(参照元: 国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」、2026年7月25日確認)
住宅用地特例は、住宅が建っている土地の固定資産税を最大6分の1に軽減する制度で、この特例が外れると、翌年度の税額が実質的に数倍になる場合があります。
全国で使用目的のない空き家は約350万戸にのぼるとされています。
(参照元: 国土交通省「空き家管理チェックリスト」、2026年7月25日確認)
「残す」という選択そのものが問題なのではなく、残すと決めたまま管理をしないことが、税負担や近隣トラブルにつながります。
区分 | 状態 | 固定資産税への影響 |
|---|---|---|
通常の空き家(管理されている) | 通気・通水・点検などが行われている | 住宅用地特例が継続し、軽減された税額のまま |
管理不全空家等 | 放置すれば特定空家等になるおそれがある状態 | 市区町村長の勧告を受けると特例の対象から外れる |
特定空家等 | そのまま放置すれば倒壊等のおそれがある状態 | 勧告を受けると特例の対象から外れ、税額が上がる |
実家の維持費と施設費の関係を家計全体で見える化したい場合は、親の施設費と実家の維持費、二重の負担をどう整理するかもあわせて参考になります。
残しながら選択肢を広げる方法
「残す」と「売る」の間には、もう一つ考えられる方法があります。
期間を区切って人に貸す、定期借家契約という仕組みです。
定期借家契約とは、契約で定めた期間が満了すると、更新されることなく確定的に契約が終了する賃貸借契約のことです。
(参照元: 国土交通省「住宅:定期建物賃貸借」、2026年7月25日確認)
通常の賃貸借契約(普通借家契約)では、貸主側に正当な事由がない限り、契約の更新を拒んだり、借主に退去を求めたりすることが難しいとされています。
定期借家制度は平成12年3月1日から施行されており、あらかじめ「2年間」「3年間」のように期間を区切って貸すことができます。
親が戻る時期が見えてきた段階で、家を確実に明け渡してもらえるという特徴があります。
ただし、借り手を見つける手間や、退去後の原状回復、家賃収入にかかる税務処理など、あわせて検討すべき点もあります。
「戻るかもしれないから何もできない」ではなく、「戻るかもしれないなりに、活用しながら備える」方法があることは、選択肢として知っておいて損はありません。
選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
売る | 戻る可能性が低いと判断できた場合 | 売却後は家を取り戻せない |
定期借家で貸す | 戻る時期がある程度見えている場合 | 借り手探し・契約手続き・税務処理の手間がある |
維持したまま残す | 戻る可能性がまだ分からない場合 | 管理の手間と固定資産税・保険料等の費用が続く |
今は判断を保留する | 本人の状態そのものが不安定な場合 | 保留する期間と見直すタイミングを決めておく必要がある |

売る・残すの判断軸そのものを一般的に整理したい場合は、親の家を売るか残すか迷ったときの考え方も参考になります。
施設入居後の実家を売るべきか保留すべきか、判断の軸から知りたい場合は、施設入居後の実家、売るべきか保留すべきかで扱っています。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の内容を家族に共有するなら、次の3点だけで十分です。
- 今は「残す」方向で管理しているだけで、売る・売らないを決めたわけではないこと
- 管理の頻度・費用・担当者を、先に決めておくこと
- 戻れるかどうかの見通しが変わったら、その時点で改めて話し合うこと
この3点なら、売却に反対する家族にも、早く手放したい家族にも、角が立たずに共有できます。
大事なのは結論を急ぐことではなく、今の状態を家族全員が同じ前提で見られるようにすることです。
このような状態でも相談できます
次のような状態でも、相談を先延ばしにする必要はありません。
- 親が施設に入って間もなく、今後の見通しがまだ分からない
- 家に戻れる可能性が残っており、売却の話をする段階ではない
- 片付けが終わっていない
- 相続がまだ発生していない
- 家族にまだこの話をしていない
- 遠方に住んでいて、家の様子を頻繁に見に行けない
- 売る・貸す・残す、どれが向いているか分からない
親の家これから相談室は、何も決まっていない段階で話を進める窓口ではありません。
今の状態を整理し、管理の進め方や、見通しが変わったときの相談先として使うこともできます。
松戸・東葛エリアで「戻るかもしれない家」を管理する人へ
松戸・柏・流山・市川・船橋・我孫子・野田・鎌ケ谷など、東葛エリアに実家があり、自分は東京・神奈川・埼玉など少し離れた場所に住んでいる、という組み合わせは珍しくありません。
完全な遠方ではなく、電車で1時間前後で行ける距離だからこそ、「今度でいいか」と後回しにしやすいという事情もあります。
千葉県内の空き家数は令和5年時点で39万4,100戸、空き家率は12.3%で、全国の13.8%をやや下回るものの、少ない数ではありません。
松戸市に限ると、空き家数は3万7,370戸、空き家率は14.0%で、千葉県平均や全国平均よりもやや高い水準です。
(参照元: 千葉県「令和5年住宅・土地統計調査 確報集計結果」、2026年7月25日確認)
戻るかもしれない家を管理する場合、常磐線・新京成線・東武アーバンパークライン・つくばエクスプレスなど、沿線と駅からの距離によって、通う負担の感じ方も変わってきます。
施設への面会や通院の付き添いに通いながら、あわせて実家の様子も見に行くとなると、移動の負担は単純に2倍になるわけではなく、精神的な負担も重なりやすくなります。
面会の頻度が高い時期は実家の管理まで手が回らないことも多いため、その期間だけ管理を外部に委託するといった使い分けも一つの方法です。
地域ごとの空き家相談窓口や補助制度の情報は、東葛エリアの空き家、市ごとの補助金・解体助成・相談窓口まとめにまとめています。
相談前チェックリスト
相談前に、次の項目を確認しておくと話がスムーズです。
- 実家の所在地(市区町村まででも構いません)
- 戸建て・マンション・土地など、家の種類
- 親が今、施設のどのような段階にいるか(入所直後、リハビリ中、長期入所見込みなど)
- 在宅復帰の見通しについて、施設や医師から何か聞いているか
- 今、誰が家の様子を見に行っているか
- 片付けの状況
- 家族の中で、この件を話しているのは誰か
- 売る・貸す・残す・保留のうち、気になっているのはどれか
すべて埋まっていなくても構いません。
分からない項目があること自体も、相談で整理できます。
まとめ
親が家に戻る可能性が残っている場合、実家を売るか残すかを今すぐ決める必要はありません。
必要なのは、決断ではなく、今の状態を安全に保つための管理と、家族での情報共有です。
管理を怠ると、管理不全空家等や特定空家等に指定され、固定資産税の負担が増えるおそれがあるため、「残す」と決めた場合はそれなりの管理が欠かせません。
戻る見通しが変わったタイミングで、売る・貸す・残すを改めて比べればよいので、今の段階では判断を急がないでください。
頭の中を整理する入り口として、50代のための親の家のこれから診断から始めることもできます。
松戸・東葛エリアの相談窓口については、松戸・東葛の親の家相談についてもあわせてご覧ください。
戻るかどうかまだ分からない家を、売らずに残す前提で整理する。
家族に共有するなら、この3点だけ
この記事の要点は、次の3つです。
- いきなり売るかどうかを決める必要はない
- 片付け・相続・管理の順番を先に整理する
- 家族で話す前に、現状と選択肢をそろえると進めやすい
相談前に確認しておくとよいこと
よくある質問
Q.親が家に戻るかもしれない場合、実家はすぐに売るべきですか?
Q.施設に入った親の家を、空き家のまま維持しても問題ありませんか?
Q.戻れるかどうか分からない実家を、人に貸すことはできますか?
Q.家族にまだこの話をしていなくても相談できますか?
Q.遠方に住んでいて、実家の様子を頻繁に見に行けなくても相談できますか?
このような状態でも相談できます
運営について
親の家これから相談室は、株式会社ホームセレクションが運営しています。 親の家、実家、空き家について、今の状況からお気軽にご相談いただけます。 ご相談内容に応じて、必要な専門家や連携先と一緒に整理します。
宅地建物取引業免許:東京都知事免許(5)第79988号
運営会社情報を見る親の家のこと、まだ決めきれなくても大丈夫です。
売るかどうかを今決める必要はありません。片付け、相続、家族相談、管理負担のことから、まず今の状況を整理できます。
30秒で親の家の状況整理何も決まっていない段階でも、相談だけでも大丈夫です。
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